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年金相談

   年金Q&A




2015年11月掲載
 
平成28年分公的年金等の受給者の扶養親族等申告書が日本年金機構から送られてきました。この申告書は何のために提出するのでしょうか。また、申告書を提出しなかったらどうなるのですか。

A

老齢年金(老齢厚生年金、老齢基礎年金など)は所得税法により雑所得として所得税がかかります。税金額は年金額に直接税率を掛けるのではなく、所得から差し引くことができる金額(各種控除)が認められています。送られてきた申告書は年金受給者が各種控除に該当するのかを報告させて、平成28年2月以降に支払われる年金額から天引きされる税金額を決めるためのものです。申告書は年金額が108万円以上(65歳以上は158万円以上)の方に送付されます。(障害年金、遺族年金には税金がかかりません。)
 各種控除は次のものがあります。配偶者控除、扶養控除、障害者控除、寡婦・寡夫控除です。またこれらの控除に該当しない場合でも受給者全員に適用する基礎控除(公的年金等控除、基礎控除相当)があります。従って、申告書が送られてきた方は全員が提出する必要があります。
 次に、申告書を提出しなかった場合はどうなるかを見ましょう。65歳以上の方で年金支給額が200万円、社会保険料が20万円で基礎控除だけの方の税額を計算します。「扶養親族等申告書」を提出した場合の税額は9189円(年額)ですが、提出しない場合は13万7835円(年額)にはね上がります。申告書は必ず出しましょう。  2015年11月5日(年金相談室 小林 善雄)
 
私は54歳の女性です。現在、亡夫の遺族厚生年金を受給しています。自分の年金はと言えば、厚生年金に59カ月加入しただけです。今後、私の年金についてどう考えたらよいのでしょうか。

A

今受給している遺族厚生年金には、ご主人が20年以上厚生年金に加入していたので、年額58万5100円の加算(中高齢寡婦加算)がついています。この加算はあなたが65歳になるとなくなってしまいます。一挙に月5万円に近い金額がなくなると生活に支障が生じます。
 まず今すぐ国民年金に加入してください。今54歳ですから60歳まで6年間(約72カ月)国民年金の保険料を納めてください。そうすると、60歳の時点で厚生年金の加入期間を含めて、年金の加入期間が10年11カ月(131カ月)になります。あなたが65歳になった時に年額21万2900円の老齢基礎年金と59カ月分の老齢厚生年金年額5万8700円、合計27万1600円を受給できます。(2017年4月、消費税率が10%に引き上げられ、年金の受給資格が25年から10年になることを前提にしています)。
 余裕があれば60歳から65歳までの5年間、国民年金に任意加入することをおすすめします。そうすると、65歳の時点で年金の加入期間が15年11カ月(191カ月)に増え、65歳の時に受給できる老齢基礎年金の額が年額31万400円に引き上がります。 2015年10月5日 (年金相談室 小林 善雄)
 
私は視力障害者で一級の障害年金(障害基礎年金と障害厚生年金)を受給中です。来月65歳になりますが、日本年金機構からハガキ形式の「年金請求書」が送られてきました。どうすればよいのか全くわかりません。

A

ハガキ形式の「年金請求書」の意味は65歳前の老齢厚生年金が65歳到達で権利がなくなり、それに代わり本来の老齢厚生年金と老齢基礎年金を受給するための請求書です。あなたは障害年金を受けているため、65歳前の老齢厚生年金は全額支給停止なっていますが、ハガキ形式の「年金請求書」は提出しなければなりません。
 それと共に、あなたが65歳になると、三通りの年金受給の選択肢が発生します。一つ目は今受給している障害基礎年金と障害厚生年金の組み合わせです。二つ目は老齢基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせです。三つ目は障害基礎年金と老齢厚生年金の組み合わせです。
 あなたはこの三通りの組み合わせの中から一番金額の高いものを選択しなければなりません。そのためには年金事務所で「制度共通年金見込額照会回答票」打ち出してもらいます。あなたの場合は従来通りの障害基礎年金と障害厚生年金の組み合わせが一番高額の選択肢でした。この組み合わせを選択する手続きとして、「年金受給選択申出書」を提出します。
 65歳前の老齢厚生年金を受けている方と同じものを送り付けて、何の説明もしない機構のやり方に憤りを感じます。  2015年9月5日 (年金相談室 小林 善雄)
 
統合失調症で療養中の40歳の男性です。障害年金の請求をしましたが、19歳の時に初めて受診した時のカルテがなく、初診の証明ができず不支給になってしまいました。どうすれば受けられるようになるでしょうか。

A

19歳の時に受診した際の証拠を探してください。ある事例では奇跡的に診察券が見つかり、氏名・受診日・受診科のみを記載した受診状況等証明書を作成してもらい提出しました。別の事例では、診療所に出向いて、診療所受診受付記録が残ってないかと問い合わせたところ、存在することがわかり、初診の証明にしました。
 ―そういうものは何もありません。その場合はどうしたらよいのでしょうか。
 「20歳前障害よる障害基礎年金の請求において初診日が確認できる書類が添付できない場合の取扱いについて」という通知が出ています。「20歳前障害による障害基礎年金の請求に限り、初診日の証明がとれない場合であっても明らかに20歳以前に発病し、医療機関で診療を受けていたことを複数の第三者が証明したものを添付できるときは、初診日を明らかにする書類として取り扱う」としています。障害基礎年金が20歳から支給されることを知らず、遅れて請求した女性が初診の証明がないことを理由に年金を受給できないのは不当だと訴えた裁判で、裁判長は、女性が通っていた学校の担任らの証言や、家族が提出した女性の様子をきめ細かく記載した申立書を根拠に、不支給決定の取り消しを命じました。  2015年8月5日 (年金相談室 小林善雄)
 
年金記録第三者委員会が6月30日で廃止になったと聞きました。年金記録の訂正手続きは今後どうなるのですか。

A

年金記録の訂正は、本年3月から厚生労働大臣に請求することができるようになりました。訂正請求の受付はこれまでの第三者委員会への「確認申立て」と同じで、最寄りの年金事務所です。
 年金事務所で直ちに記録訂正できるものは年金事務所で記録を訂正しますが、それ以外のものは地方厚生局へ請求書が送られます。地方厚生局に弁護士、社会保険労務士、税理士などの専門家による「地方年金記録訂正審議会」が設けられ、年金記録を訂正するかどうかを審議し、答申書を作成します。その答申書を受けて地方厚生局長が決定します。
 この年金記録の訂正請求の最大の特徴は、「訂正の請求」が国民年金法、厚生年金保険法に条文として規定され、国民の権利として位置付けられたことです。第三者委員会の「あっせん」は行政処分ではないため、不服があっても、不服申立てや訴訟ができませんでしたが、今回の訂正決定あるいは不訂正決定は不服がある場合は、厚生労働大臣(厚生労働省年金局事業企画課)に審査請求することができます。また、厚生労働大臣への審査請求を経ずに、直接、裁判所に訴訟を提起することもできます。加えて、この訂正請求は請求期限が規定されていないので、過去に第三者委員会で「非あっせん」にされた件でも、再度請求することが可能です。  2015年7月5日 (年金相談室 小林善雄)
 
短時間働く人も厚生年金に入るのですか。

A

働く高齢者が増えていますが、現在は週30時間程度働くと、70歳までは厚生年金に加入することになっています。来年の10月(2016年10月)から厚生年金に入る条件が変わり、次の条件に該当する人は、厚生年金に加入することになります。@週の労働時間が20時間以上であることA賃金の月額が8万8000円以上であることB勤務期間が1年以上見込まれることC学生は適用されないことD501人以上の規模の事業所に働く場合を対象とすること等です。事業所の規模は、「1年のうち6月以上、500人を超える雇用のある事業所」とされています。
 年金受給者の場合、厚生年金に加入した期間に応じて年金額が増えます。
 
公的年金の積立金は、どのように運用されているのですか。

A

年金の積立金の運用割合は、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%となっています。「…株式等は想定よりも下振れ確率が大きい場合があることも十分に考慮すること…」とされていて、元本の保証されない株式等への投資の危険性は国も意識しています。国民の年金積立金ですから、国の景気対策として積立金を使うことに反対の声があるのは当然のこと。株式等への投資をやめて全額、元本の保証された形で運用されるべきです。 2015年6月5日 (年金相談室 阿久津嘉子)